実家じまいとは、親が暮らしていた家の中の物を「残す・売る・譲る・処分する」に分けて片付け、最後に家そのものの扱いまで決める一連の作業です。基本の順番は、方針を決める→重要書類と貴重品を探す→仕分け→買取・譲渡→処分→建物の扱いの6段階で、売る前に相続の手続きとの関係を確かめておくことが大切です。
「何から手をつければいいのか分からない」「片付けているうちに、捨ててはいけない物まで手放してしまわないか不安」。実家じまいを前にしたご家族から、よく聞かれる声です。
実家じまいは、片付け・遺品整理・買取・処分・相続の手続きが重なり合う作業です。順番を誤ると、後から必要な書類が見つからなかったり、相続の判断に影響が出たりすることがあります。
本記事では、実家じまいの全体の流れを6つのステップで整理し、買取を組み込むときの注意点、知っておきたい期限、家族で揉めないための進め方までをまとめました。
実家じまいとは?遺品整理・生前整理との違い
実家じまいは、家の中の物の片付けだけでなく、家そのものを今後どうするかまで含めた言葉です。親がご存命かどうか、誰が主体になって進めるかによって、遺品整理や生前整理と重なる部分があります。
3つの言葉は混同されやすいのですが、主に「いつ」「誰が」「どこまで」行うかで区別できます。
| 項目 | 実家じまい | 遺品整理 | 生前整理 |
|---|---|---|---|
| 主なタイミング | 施設入居・同居・相続など | 親が亡くなった後 | 本人が元気なうち |
| 進める人 | 主に子どもなどの家族 | 主に相続人 | 本人(家族が手伝う) |
| 対象 | 家の中の物+建物・土地 | 故人の持ち物 | 本人の持ち物 |
| 相続との関係 | 状況により関係する | 強く関係する | 相続前の準備になる |
親が亡くなった後に実家を片付ける場合、作業の中身は遺品整理と重なります。一方、親が施設に入居するために家を空けるケースでは、本人の意思を確認しながら進められる点で、生前整理に近い性格になります。本人が主体になって進める生前整理については、生前整理と買取の活用法もご参照ください。
実家じまいを考え始めるきっかけと始めどき
実家じまいは、親の施設入居や同居、相続の発生をきっかけに始まることが多い作業です。空き家の状態が長く続くと、建物の傷みや管理の負担が増えるため、方針だけでも早めに家族で話し合っておくと進めやすくなります。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は約900万戸、総住宅数に占める割合(空き家率)は13.8%で、いずれも過去最多・過去最高となっています(総務省統計局 令和5年住宅・土地統計調査)。住む人がいなくなった実家をどうするかは、多くのご家庭に共通する課題になっています。
実家じまいを考え始める主なきっかけには、次のようなものがあります。
- 親が高齢者施設に入居する、または子どもの家で同居を始める
- 親が亡くなり、相続の手続きが始まる
- 実家が遠方にあり、定期的な換気や掃除などの管理が難しくなった
- 固定資産税や光熱費の負担を見直したい
「いつか片付けよう」と先送りにしていると、建物の傷みが進んだり、家族の予定が合わなくなったりします。すぐに作業を始められない場合でも、誰が中心になるか、家を残すか手放すかといった大まかな方針だけは、早めに共有しておくのがおすすめです。
実家じまいの流れ|6つのステップ
実家じまいは「方針を決める→探す→分ける→売る・譲る→処分する→家の扱いを決める」の順に進めると、手戻りが少なくなります。物を減らす作業より先に、重要な物を探し出す工程を置くのがポイントです。
1家族で方針を決める
誰が中心になって進めるか、家を残すか手放すか、費用をどう分担するか、いつまでに終えたいかを話し合います。親がご存命であれば、本人の希望を最初に確認しておきましょう。
2重要書類と貴重品を探す
通帳・印鑑・権利証(登記識別情報)・保険証券・年金関係の書類・契約書・貴金属などを、片付けを始める前に探し出して1か所にまとめます。これらは相続の手続きや各種の解約に必要になります。
3物を仕分ける
「残す」「売る」「譲る」「処分する」に加えて、「保留」の箱を用意すると判断が止まりにくくなります。迷う物は保留に入れて先に進み、後から家族で見直します。
4買取・譲渡で手放す
値段が付く可能性のある物は、処分する前に買取業者に査定を依頼します。物の量や品目によって、店頭・出張・宅配の使い分けが変わります。方法ごとの特徴は店頭・出張・宅配買取の違いで詳しく解説しています。
5残った物を処分する
自治体の粗大ごみ回収や持ち込み施設を使う方法と、業者に依頼する方法があります。家庭から出るごみを料金を受け取って回収できるのは、市区町村の一般廃棄物処理業の許可を受けた事業者などに限られます。
6建物と土地の扱いを決める
売却・賃貸・解体・家族が住むなどの選択肢から決めます。相続した不動産は、相続登記の申請が義務になっている点にも注意が必要です。
監修者のポイント
実家じまいでは、物を減らすことを急ぐより、最初に「必ず探し出す物のリスト」を家族で共有しておくほうが、後からの後悔が少なくなります。書類や貴金属は、意外な場所に保管されていることがあるため、引き出しや箱の中身を確かめてから手放すようにしましょう。
買取を組み込むときに気をつけたいこと
実家じまいで買取を利用するときは、相続の判断との関係、自宅に来てもらう買取のルール、処分前の価値の確認の3点を押さえておくと安心です。特に相続放棄を考えている場合は、売却の前に専門家へ相談しましょう。
相続放棄を考えているなら、売却は判断の後に
相続放棄(亡くなった方の財産も借金も引き継がない手続き)は、原則として相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。また民法では、相続人が相続財産を処分した場合、相続を承認したものとみなされることがあると定められています(e-Gov法令検索 民法 第915条・第921条)。遺品を売却する前に、相続放棄の可能性がないかを家族で確認し、迷う場合は司法書士・弁護士などの専門家に相談すると安心です。
自宅に来てもらう買取にはルールがある
出張買取のように、店舗以外の場所で業者が物を買い取る取引は、特定商取引法の「訪問購入」にあたります。法定の書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができ、その間は品物の引き渡しを拒むこともできます(消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問購入」)。ただし、自動車(二輪を除く)・家具・大型の家電・本やCD類など、制度の対象外になる品目もあります。手続きの流れは訪問購入のクーリングオフ制度もご参照ください。
処分する前に、価値を確かめる
古い着物、貴金属、時計、切手、骨董品、カメラなどは、見た目では価値が分かりにくい品物です。処分の候補に入れる前に、一度査定を受けておくと判断しやすくなります。付属品や保証書が残っていれば、品物と一緒にまとめておきましょう。査定前の準備は売る前の手入れと付属品チェックで整理しています。
遺品整理業者と買取業者を使い分ける
物の量が多い場合は、片付けを担う遺品整理業者と、値段を付けて買い取る買取業者を組み合わせる方法もあります。それぞれの役割と頼み方の違いは、遺品整理業者と買取業者の使い分けで解説しています。
期間・費用の考え方と、知っておきたい期限
実家じまいにかかる期間と費用は、物の量、間取り、家族が作業に関われる日数、実家までの距離によって大きく変わります。一方で、相続に関わる手続きには法律で決まった期限があるため、先に期限を確認してから作業の計画を立てましょう。
期間や費用を見積もるときは、次の点を家族で整理しておくと、業者の見積もりも比べやすくなります。
- 部屋数と、物が多い部屋(押し入れ・納戸・物置など)の数
- 家族が現地で作業できる日数と、実家までの移動時間
- 自分たちで運び出せる量と、業者に任せたい範囲
- 買取に出せそうな品物の目安
実家じまいに関わる主な期限は次のとおりです。
| 手続き | 期限 | 参照先 |
|---|---|---|
| 相続放棄の申述 | 相続の開始を知った時から原則3か月以内 | 民法 第915条 |
| 相続登記の申請 | 不動産の取得を知った日から3年以内 | 法務省 |
| 訪問購入のクーリング・オフ | 法定の書面を受け取った日から8日間 | 消費者庁 |
相続登記は2024年4月1日から申請が義務になり、正当な理由なく申請しない場合は10万円以下の過料の対象になる可能性があります。2024年4月1日より前に相続した不動産で登記がされていないものは、2027年3月31日までに申請する必要があります(法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A)。
家族で揉めないための進め方
実家じまいで家族の意見が分かれやすいのは、思い出の品の扱い、費用の分担、作業の負担の偏りです。最初にルールを決め、決めたことを記録に残しておくと、後からの行き違いを防げます。
- 形見分けのルールを決める:欲しい物を伝える期限を決め、希望が重なった場合の決め方も話し合っておきます。
- 手放す前に写真を残す:処分や売却の前に写真を撮っておくと、遠方の家族とも状況を共有できます。
- お金の出入りを記録する:業者に支払った費用や買取で受け取った金額は、明細と一緒に保管し、家族に共有します。
- 作業に参加できない家族にも報告する:現地に来られない家族にも、進み具合と判断の内容をこまめに伝えます。
トラブルが起きたときや、業者とのやり取りで不安を感じたときは、消費者ホットライン「188」から最寄りの消費生活センターに相談できます。遺品整理サービスをめぐる料金や作業内容のトラブルについては、国民生活センターも注意を呼びかけています(国民生活センター 遺品整理サービスでの契約トラブル)。
よくある質問
実家じまいとは何ですか?
実家じまいとは、親が暮らしていた家の中の物を残す・売る・譲る・処分するに分けて片付け、最後に建物や土地の扱いまで決める一連の作業です。親が亡くなった後に行う場合は遺品整理と、親が元気なうちに本人と一緒に進める場合は生前整理と重なる部分があります。
実家じまいは何から始めればよいですか?
まずは家族で方針を話し合い、その次に通帳・印鑑・権利証・保険証券などの重要書類と貴重品を探し出すことから始めます。物を減らす作業を先に進めると、必要な書類を誤って処分してしまうおそれがあるためです。
親の持ち物を売ってもよいタイミングはいつですか?
親が亡くなった後に売却する場合は、相続放棄をするかどうかを決めてからが安心です。民法では、相続財産を処分すると相続を承認したものとみなされることがあるためです。判断に迷うときは、司法書士や弁護士などの専門家に相談してください。
実家じまいはどのくらいの期間がかかりますか?
期間は、物の量、間取り、家族が作業に関われる日数、実家までの距離によって大きく変わります。相続に関わる手続きには期限があるため、相続放棄(原則3か月以内)や相続登記(3年以内)の期限を先に確認し、それに合わせて作業の計画を立てるのがおすすめです。
まとめ
実家じまいは、片付け・買取・処分・相続の手続きが重なる作業です。家族で方針を決めたうえで、重要書類と貴重品を探し出してから仕分けに進むと、手戻りや後悔を減らせます。
- 最初に家族で方針を共有し、親がご存命なら本人の希望を確認する
- 物を減らす前に、重要書類と貴重品を探し出す
- 売却の前に、相続放棄の可能性と期限を確認する
- 出張買取は訪問購入のルール(8日間のクーリング・オフ)を知っておく
- 形見分けや費用のルールを決め、記録を残して家族に共有する
一度にすべてを終わらせようとせず、ステップごとに区切って進めることが、実家じまいを無理なく終えるための近道です。
本記事の統計・制度に関する情報は、2026年10月17日時点で各公式サイトの掲載内容を確認しています。


